ヤンバル(沖縄本島北部)にて河川工事現場の在来魚類の救出!
3月、少し肌寒い朝、車を飛ばしてヤンバルへ向かった。
数日前にヤンバルの友人から受けた連絡「川をせき止めての改修工事で、魚達が沢山死んでいる・・・。」
の情報を確認するためだ。
沖縄本島には大小270近い河川があるというが、外来種も無く、フナやメダカなど沖縄在来の魚のみが棲んでいる川は極めて少ない。
ダムや山間部、米軍施設内を除く里野環境ではここが唯一最後の魚たちの聖域といえるだろう。
その聖域にパワーショベルが投入されているというのだ。
現場へ着いてみると、工事の規模は大掛りで、すでに着工から数ヶ月は経過していようか。
過去に河川の氾濫被害があったようで地域住民の要請を受けた複数年度にわたって実施される公共事業だった。
現場を見た瞬間、「もっと早く来るべきだった」と、あまりにも変わり果てた現状に愕然とし、同時に数年来この河川に愛着を感じ観察してきた者として、工事の目的を理解しながらも、何というのか、「我が家が荒らされている」ような、いい知れぬ怒りのようなものがこみ上げた。
川底に土砂が堆積し、流れが悪くなった川は大雨のたびに氾濫し、地域に被害が及んだという。
辺りを見まわるとたしかにこの川のいたるところで川幅の狭まりが確認できた。
右の写真は未工事部分の川の上流部で、流れの左側のコンクリート岸から対岸まで2mくらいの川幅だ。
しかしご覧のように右側部分は土砂崩れしている。この土砂や農地からの土砂などが下のほうへ流され次第に堆積し排水において支障をきたしているようだ。
この一帯の流れの中心部。工事前の川幅は1mくらいで深さ数十cm〜1m。
工事現場担当者の説明によると、工事では両岸を拡張し、底の土砂をさらい大雨時の排水にも対応させる計画という。
川岸はコンクリート化するとの事だが沈水面では生き物が棲家に出来るように穴のあいた資材を使い、底面は固めず裸地のままで、生き物にも配慮した構造とのことだ。
工事そのものは水害に悩む地域の方々の要望であり、健康的な生活あっての自然保護という点ではこの工事における生き物への配慮はありがたいと思えた。・・・しかしである・。
工事の手順は、工事区間の上流部を土嚢などでふさぎ堰を作り、水の流入を止める。
区間内に取り残された水を吸い出し(ポンプアップ)ながら同時に堰からオーバフローする水を区間下方の下流に流す。やがて区間内の水が干上がったところで造成作業に入る。というものだ。
場所を移動し、まさにポンプアップ終了直後の区間に廻ってみた。
そこで目に飛び込んできたのは干上がった川底に累々と横たわるおびただしい数の瀕死の魚達だった。数百か数千か。
わずかに残った水の溜まりになお沢山の魚がもがきひしめき合っていた。
驚いた事に工事作業員の方々はこの魚達の惨状には目もくれず、もくもくと工程を進めているのだ。
生き物や環境に配慮しているはずの川の設計図とは裏腹に「現場」というステージでは「土木作業」だけが淡々と進められていた。生き物達は見殺しにされていた。
魚の保護のため即現場監督さんに作業の一時中止をお願いしたところ、工程が遅れているなどの理由で快諾というわけにはいかなかったが、監督官庁へ電話し、なんとか了解を取り付けた。
私は現場に従事しているこの方々を批判するつもりは無い。これはこの種の工事でどこにでもある「現場レベル」の例だろう。作業員の方にしても「魚がかわいそう」だからといって上の指示も無いのに仕事を放り出して他の事をするわけにはいかない。また、役所にしても予算を期限内に執行する責任がある。
「環境に配慮した事業」であれば当然「現場に生息する生き物を守ろう」の精神があったはずだ。これを見せ掛けにしてはならない。思慮不足の結果、貴重な自然が破壊されて最終的に困るのは私達人間だ。誰かを悪者にして残念な報告を待つよりも、私達市民ひとりひとりがこの種の「自然に手を加える工事」について考える事で誰だってやりたくない「本音(現場)と建前(理想)」のある環境配慮型事業をさせないで済むようにできるのではないだろうか。そして忘れてはならないのが、なぜこの河川に土砂が堆積し結果的に工事が必要となったのか。この川においては自然的にリターや砂礫が積もっていく現象がその主因ではなく、道路工事、農地整備、それに伴う斜面の崖崩れなど人為的開発行為の結果大量の土砂などが自然のサイクルから比較すると超短期間に流れ込んだ為ではないだろうか。
早速救出作戦を開始する。夕方近くになっていた。
工事の一時中断には時間の制約があるうえ、粘性のある泥水に混ざって窒息しかけているメダカやフナが千匹以上はいようかと言うほどの魚達相手に、日没までにどれくらいの数を助け出せるかは
“ スピード ”
が要であった。
「こうなったら人海戦術じゃ!」といきたかったところだが、
手勢の者(?)は友人やBB(ブナガヤボランティアメンバー)3人だけ、しかも内ひとりは“風邪”をひいているとの事で戦線離脱。ご近所にも呼びかけてなんとか数を集めたかったが大抵は留守か、反応が今一つ。
少数精鋭と決めこんで泥の中に入り網ですくいだし救出するがとても間に合わず、足元では窒息した魚達が次々と浮き沈みしている。すくった魚はバケツに溜め込み下流の未工事区域に放流するが泳ぎ出してくれる魚は半分以下。速やかな作業が求められるが体はお尻のの辺りまで泥に食い込み足場は相当悪い。そんな時だった。
5〜6人の近くに住む有志の方々が網やバケツを持ちより集まって来て手伝ってくれた。ここの自然は地域の方に大切にされてはじめて維持される。頼もしかった。
 
“ 最後の聖域 ”での約4時間の“救出作戦
”が終わった。
救出作業は人手不足ながらも地域の方々とBBの皆さんの奮闘で順調に進み、数え切れないほどの魚達(メダカ、フナ、タウナギ、タイワンキンギョ)が土砂生き埋めの難を逃れた。
しかしこの工事によって直接死んだ貴重な在来の淡水魚の数ははるかに上まり数え切れない。その上それまで水草が繁茂し、起伏を持った川に繁栄していた魚達が工事完了後の扁平で草1本生えていない川を傷を負ったまま生きていかなくてはならず、また元のような水辺の生き物達が繁栄した美しい川に戻るには長い時間が必要だろう。
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